この作家は、読者を飽きさせない。
中だるみのない小説を書くのがうまい。
ナオミ(直美)とカナコ(加奈子)は同じ大学を卒業した親友同士で29歳。
ナオミは百貨店の外商部に勤めており、カナコは専業主婦。
カナコは夫である達郎はDV夫であった。気に入らない事があるとカナコに暴力を振るっていた。
ナオミとカナコは達郎を殺害する計画を立てる。
ナオミは外商部の仕事で知り合った李朱美という中国人女性とある事がきっかけで親しくなる。
李朱美が池袋で経営する会社で林竜輝という中国人男性を見かける。
この中国男性は、カナコの夫と瓜二つであった。
ナオミとカナコの達郎殺人計画の概要は次の通り。
夫がお酒を飲んで酔っ払って帰宅した日に夫が寝ている間にロープで首を絞め殺害する。
その遺体を目につかない山林の山奥へ埋める。
一方で、ナオミが外商部の仕事で知り合った未亡人で認知症のお年寄りを達郎に紹介する。
達郎は銀行に勤めており、そのお年寄りから預かった一千万の投資を着服し、中国に逃避する
というシナリオを彼女達は用意する。
二百万を達郎と瓜二つの林竜輝に渡し、達郎に成り代わって、達郎のパスポートを使って、上海に
里帰りさせる。
こうすれば、日本の警察も中国まで捜査することは出来ない。
然しながら、いざ、殺害を実行すると、いろいろな処から綻びが出始めてしまう。
例えば、銀行員が1億、2億ではなくたかだか一千万を着服して、海外へ逃げるか?
そんなことまでして、将来を棒に振るか?
もう二度と日本に戻ってこないように言っておいた林竜輝は再度、池袋に戻ってきてしまう。
これは計画になかった事。
彼女達も犯行時のマンションの録画はたかだか二週間程度しか記録されていないと
思っていたが、ハードディスク上には、少なくとも半年以上の記録があることを後で知る。
達郎の妹の陽子は興信所を使って、姿を消した兄の行方を追っていく中で、じわりじわりと
真実を手繰り寄せて行く。
最後には警察も動き出し、カナコは任意同行を警察から求められる。
間一髪の処でナオミと李朱美の機転により弁護士が任意同行であることを理由に
カナコを警察所から解放させることに成功し、カナコと弁護士は翌朝9時に警察に行く事を承諾して
一旦、カナコは自宅に帰り、ナオミと一緒に翌朝9時までに上海へ海外逃亡を試みる。
陽子も執拗にナオミとカナコを追ってくる。
さて、ナオミとカナコは無事、国外(上海)へ逃亡できるのか?
一気読みでした。面白かったです。

