『空を飛ぶパラソル』

夢野久作(ゆめの きゅうさく)著
雑誌 『新青年』1929年(昭和4年)10月号
あらすじ
福岡の地方紙「福岡時報」に勤める新聞記者の〈私〉は、特ダネを求めて取材に出ている途中、
空色のパラソルを差した一人の女が、鉄道線路に身を投げる瞬間を目撃します。
女は汽車に轢かれて即死し、
その瞬間、パラソルだけが宙を舞い、空を飛ぶ――
ここから題名が来ています。
〈私〉は人命救助よりも記者としての欲望を優先し、
遺体から名刺や質屋の証文を盗み取る
女の身元を独自に調査する
その結果、
女は九州帝国大学(九大)関係の医学生(医学部系)と関係を持っていた女性で、
妊娠したまま自殺した。
医学生側は放蕩者・色魔として噂される人物だった
という扇情的な記事を書き、夕刊に掲載します。
しかし後日、警官から知らされるのは、

「家族も関係者も、
そんな女は“最初から存在しなかった”と言い張っている」
という不可解な事実でした。
真実を暴いたはずの記事は、誰も救わず、誰からも肯定されない。
自殺した女性は、元々名家の出身であり、父を始めとして、誰もがそんな女性は知らないを突き通す。
名門大学医学部というエリート集団からもそのようなふしだらをする医学生はいないと否定されます。
女の人生も、尊厳も、記者の「正義」も、すべてが宙吊りのまま終わります。
話は外れますが、主人公の新聞記者が警察の知合いに、『今日は、一緒にこの後飲まないか?』
という科白が印象に残っていて、当時(昭和4年)は、飲み屋ってどんな処なのだろうと直接、小説には関係ないシーンが強く印象に残っています。

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